tCat  My Favorites! - Jugendstil

有機的なデザインが特徴のアールヌーボー(ドイツにおけるユーゲントシュティル)。これらのデザインも非常に興味深いものです。ドイツだけではなく、この時代の幅広い窯をとりあげてみます。

あまり写りが良くなくて恐縮ですが、写真をクリックすると新しいウィンドウが開き拡大画像が見られます。(拡大画像画面のウィンドウを閉じて戻ってください)


     

Bing & Groendahl Crystal Glaze Vase
  1898年 高さ18cm

結晶釉は中国磁器の釉薬を研究していたセーヴルによって発見されたとされていますが、1889年のパリ万博ではコペンハーゲンが結晶釉作品を出品しています。その後主だった窯はこぞって結晶釉作品(ほとんどがベース)に挑戦しています。原料の配合や釉のかけ方、焼成の具合で様々な色と結晶を生み出すこの釉薬は、作り手にとってもとても面白いものだったのではないでしょうか。
これはビング&グレンダールの結晶釉ベースです。珍しいピンク色で結晶も変化に富んでおり、見る角度で違う景色を見せてくれます。フォルムもとても美しいです。


     

Roerstrand Crystal Glaze Vase
  1900年頃 高さ15.5cm

こちらはロストランドの結晶釉ベース。結晶はごく少なく、主に口辺近辺に発現するのみですが、その他部分の発色がなんとも微妙で美しいです。画像ではうまく写せていませんが、ベージュ色の釉薬の流れの合間に紫、ピンク、青色がほのかに見えてとても幻想的です。
結晶釉は流動性の高い釉薬なので、どちらのベースも底はグラインダーで垂れた釉薬を削っています。


   

Werkstaetten fuer Kunst im Handwerk Muenchen Vase
  1900年頃 高さ13.5cm

この時代の特筆すべきアーティスト、テオドル・シュムッツ・バウディス(Theodor Schmuz-Baudiss)作の一輪挿しです。
彼はKPMやローゼンタールで大活躍する前、上記の「ミュンヘン工房」に在籍しており、その時に制作した「パンジー文サーヴィス」で一躍注目されます。この一輪挿しもその頃のものだと思います。底のマークは彼のイニシャル「STB」とミュンヘン工房のWMです。

落ち着いたフォルムに釉下彩一色のシンプルな絵付けですが、バウディスの卓越したデザインセンスを感じます。


   

KPM C/S
  1909年

上述のパンジー文サーヴィスに非常に似た形をしています(ハンドルやソーサーの縁が違いますが)。このデザインはバウディスがKPMで手がけた「Ceres」シリーズに繋がるもので、まちがいなく彼の造形でしょう。

この作品はKPMの赤いオーブマークがなく、染付の王錫にスクラッチが入っていますので2級品です。おそらく2級品なため正規には出荷されず、バウディス周辺の誰かが個人用に絵付けしたものではないでしょうか。 金彩を含め丁寧に絵付けされており、当時の流行をよく表していると思います。

カップに描かれた「E」、これは絵付けをした人を表しているのか、描かれた女性のイニシャルなのか…などと楽しく想像しています。
2級品だとか外絵付けだとか、そんなことどうでもいい!と素直に思える作品です。


   

KPM Vase
  1908年 高さ11.3cm

当時は各窯競って釉薬を研究し、「窯変」と呼ばれる焼成時に予期しない発色や景色を呈する作品を追求していました。
なかでもKPMは窯変に加えて金彩・ジュール技術を駆使し、他窯より抜きん出た作品を作っています。
このベースもにも、ひび割れたような効果の釉薬、質感豊かな苺のジュール、ジュールの上に施された金彩など、KPMの優れた技術とセンスが感じられます。


 

 

2 Rosenthal C/Ss
  どちらも1910年 J.V. Guldbrandsen絵付

ローゼンタールの釉下彩は、1909年コペンハーゲン窯からJulius Vilhelm Guldbrandsenを招聘して本格的に始まります。
このカップもGuldbrandsen絵付けです。素地にもかすかにレリーフを施し、釉下彩で絵付けすることによって濃淡と立体感を生み出しています。この手法は同じくローゼンタールやベルリンで活躍したシュムッツ・バウディスも用いています。
上のデミタスカップはアシンメトリーな花の配置、下の"Donatello"というシェイプのティーカップはバランスの取れた模様になっています。


 

Rosenthal "Donatello" Demitasse C/S
  1927年

清楚な野菊の花を一面にエナメルであしらい、間を金彩で埋めてあります。濃紺がこれらを引き締めて、とても艶っぽい印象です。
濃紺地との境に金で描かれた、ゆるゆるとくねる野菊の茎がユーゲントシュティルらしいですね。


   

Nymphenburg C/S
  1900年代初頭

蔓のようにくねったハンドルやカップ側面中央とソーサー中央の葉っぱ?に、油滴のような細胞のような金彩が加えられて妖しさを醸し出すカップです。


 

  Nymphenburg C/S, Plate
  1900年代初頭

上のカップと同シリーズのフォームです。こちらはアジアンタムのような葉っぱがデザインされ、おとなしい雰囲気です。ニンフェンブルグのユーゲントシュティルは、マイセンやKPMにくらべて、やや素朴な感じですね。


 

KPM Plate
  1900年頃、直径17cm

一見地味な印象ですが、よく見ると高度な技術と美しいデザインが楽しめ、興味は尽きません。
このお皿は、3つの蘭の花部分に注目! 金彩の上に施された緑色のジュール、花びら上部の薄緑〜透明のジュールのドット、花びら下部の輪郭を細かくなぞった白いエナメルと、さりげなく凝りまくっています。絵付け師たちの遊び心と自信を感じます。


   

KPM Plate
  1901年、直径25cm

釉下彩の絵付けが水彩画のような優しい印象を生んでいる作品です。
このお皿は、蘭の花芯部分に透明のジュールがうたれ、ぱっと見はそれと分かりませんが、よく見るとジュールが水滴のようで、花のみずみずしさを表現しているのに気付く仕掛けになっています。


 

KPM Plate
  1902年、直径21cm

ゆるやかな曲線で構成された金彩模様と、抑えた黄色と珊瑚色のジュールがKPMらしく非常に上品でスタイリッシュです。


 

KPM Plate "Faecher"
  1903年、直径25cm

「Faecher(=Subject)」と名付けられている作品。上の蘭絵のものや珊瑚色ジュールのものと同じ基本構成のヴァリエーションです。
三角部分に集まるっているのは花?果実?虫?何でしょう?


 

KPM Plate "Augusta"
  1903年、直径25cm

プロシア王妃アウグスタの名前を冠したサーヴィスのお皿です。Julius Mantelデザイン。
銀杏でしょうか、薄いモスグリーンを基調としてラズベリー色のお得意のジュールが効いています。


 

KPM Plate
  1903年、直径21cm

金彩、ジュールに透かし彫りまで加えた凝った作品です。
金彩で連続させた昼顔(または朝顔?)の葉が重厚な感じですが、透かし彫りと薄いピンク、ブルーの花のジュールが軽やかさを加えています。


 

KPM Plate "Hazelnut"
  1914年、直径25cm

ヘーゼルナッツをモティーフとした作品。
実の部分の金彩は蒔絵のように色を変えて、質感を表現しています。


   

   

Bing & Grondhal Heron C/S, Trio
  上下とも1915-48年

ドイツではなくデンマークのビング&グレンダールの作品です。
この鷺のサービスは、1887年にPietro Krohnによってデザインされ、1889年パリ万博に出品されています。2つとも残念ながらパリ万博出品時に作られたものではなく、少し時代が下ります。
上のカップ&ソーサーがパリ万博出品時の配色で、下のトリオは多色の釉下彩を用いています。
パリ万博バージョンは、いかにもB&Gらしい染付が基調ですが、金彩をふんだんに使って北欧の窯とは思えない強烈な印象です。カップの内側だけではなく、ソーサーの裏も金塗りされています。下のトリオは、この斬新なシェイプに、北欧の窯らしい淡い彩色が不思議にマッチしています。


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