ここではローゼンタール以外のフィギュアをご紹介します。アールデコ期には従来の古典的なモティーフにとらわれない、多彩な作風のフィギュアが作り出され始めました。
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St. Petersburg "Tamara Karsawina"
D.I. Ivanov作、1923年、H21.5cm20世紀初頭のパリに一大センセーションを巻き起こし、マイセンを始め磁器フィギュアのモティーフとして好まれた「バレエ・リュス(ロシアン・バレエ)」。これは本家ロシア・ペトログラード国立磁器工場作「火の鳥」の衣装を付けたプリマ、タマラ・カルサヴィナです。
ドイツ圏のフィギュアを見慣れていると、ベタッとして平面的な絵付けに見えますが、表情が柔らかくて力強く、ロシアらしいとても豊かなフィギュアだと思います。いつか相手役ミハイル・フォーキンのフィギュアも揃えてあげたいです。
この作品は、カルサヴィナの写真を参考に作られていると思われます。写真や雑誌の普及に伴って、バレエ・リュスのフィギュアは各窯で作られました。
Bing & Groendahl "Lady with Slippers"
Hans Tegner / Jens Jacob Bregno作、Model#8034 or 8035、1915-32年、H16cmアンダーグレーズの絵付けが主流のビング&グレンダールにしては珍しい上絵付けの写実的なフィギュア。
本来3体組のフィギュアで、パーティーの余興なのでしょうか、目隠しをした男性が音を立てないよう靴を脱いだ二人の女性を追いかけるという情景のユーモラスな作品です。
目隠しをして大きく手を広げ、女性を追いかける男性と、靴を手に持ち口に指を立てて「シー」とする女性、そしてこの女性。いつか3体揃えてあげたいです。
どこから見ても決まっている確かな造形、生き生きとした表情、この窯の実力を見直した作品。16cmと小さいのですが、大きく見えるフィギュアです。
Nymphenburg "Tirolian Lady"
L. Schroeder-Lechner作、Model#831、1937年、H20cmニンフェンブルグのフィギュアの特徴である美しいS字型のポーズが、この作品にも控えめながら踏襲されています。
本来男性とペアであり、ドイツの各地方の民族衣装姿のペアフィギュアがシリーズとして作られました。民族意識が高揚した当時の政治的な雰囲気が表れたものだと思われます。
平面的にデフォルメされた顔などに時代の流行を感じますが、ポーズの美しさ、安定感、ドレスの質感など、やはりニンフェンブルグらしいフィギュアです。
Rudolstedt Volkstedt "Snake Charmer"
F. Oppel作、Model#不明、1920年代(First Made Unknown)、H20cmドイツ・チューリンゲン地方の中小各窯でも、この時期多くのフィギュアが作られていましたが、出来にはかなりのばらつきがあります。ルドルシュタット・フォルクシュタットのこの作品は磁質がいまいちですが、かなり上出来といえます。
ローゼンタール等で活躍していたGustav Oppelの弟、Franz Oppel作。兄弟の蛇遣いフィギュア(Gustavは#956 Salambo)を見比べてみると、やはりどこか似ていて興味深いです。
KPM "Lady Holding Mask"
作者不明、Model#11904、1925年(First Made Unknown)、H23cmデコ風に絵付けしがいがありそうで、白磁なのがちょっと残念なKPMのフィギュア。マスクを手にして仮面舞踏会に出かけるのでしょうか、髪型や服のデザインがお洒落ですね。
この頃は、各窯とも外部アーティストを招いて盛んにモダンなフィギュアを作っていましたが、この作品もそうした一つかもしれません。
KPM "Lady with Deer"
G. Schliepstein作、Model# Unknown、1926年、H20cmローゼンタールで数々のフィギュアを手がけたSchliepsteinですが、KPMでも素晴らしい作品を生み出しています。女性の髪にデコの特徴がよく出ていますね。
ローゼンタールとはまた違う、とろりとした色のKPMの白磁が陰影を際立たせてくれます。
この作品には、女性とハウンド犬という対のフィギュアがあります。いつか揃えてみたいです。
Hutschenreuther "Mephisto"
K. Tutter作、1930年代(First Made Unknown)、H20cmゲーテ「ファウスト」に出てくる悪魔メフィストフェレスです。顔の絵付けがやはり良くて、表情から演劇の場面、セリフまで伝わってきそうです。
K.Tutterはフッチェンロイターでたくさんのフィギュアを制作しましたが、その中でも名作だと思います。
Hutschenreuther "Dancer"
K. Tutter作、1930年代(First Made Unknown)、H16cmデコ風の絵付けが可愛い小さめのフィギュア。小さいため、顔の絵付けは難しいと判断されて省略されたのでしょうか。
顔に下手に絵付けをするとせっかくの造形も台無しになるので、このように絵付け無しで正解だと思います。
Hutschenreuther "Odaliske"
C.Werner作、1920年代後半、H23cmローゼンタールでもフィギュアを制作していたCarl Wernerのオダリスク(湯浴みする女)。
古典的で豊かな造形に、ポップとも言える遊び心あふれるモダンな絵付けが対照的です。やはりエキゾチックな雰囲気に満ちています。
Hutschenreuther "Exotic Dancer"
C.H. Defanti作、1920年代後半、H28cmローゼンタールで有名な「Korean Dancer」他、数々のエキゾチックな踊り子やピエロのフィギュアを制作していたDefantiのフィギュア。この時代、窯を掛け持ちするアーティストは多かったようです。
エキゾチック・突っ張ったおおげさなポーズ、とお手本のようなアールデコ・フィギュアです。
Unterweissbach(Schwarzburger) "Japanese Man"
M. Schlameus作、1920年代頃(First Made 1916)、H27cm珍しい町人風の日本男性フィギュアです。元禄時代あたりの、大店の遊び人若旦那といった趣ですね。
ヨーロッパの窯の東洋人フィギュアは、どうしても西洋風が伺えて違和感があるのですが、このフィギュアは顔の表情や着物の絵付け、ポーズなど、とても日本的です。背中の羽織に帯が描かれているのはご愛敬!
フィギュア作者のMartha Schlameus(女性です!)は何と日本に旅行していて、その時にたくさんの人物をデッサンし、帰国してから日本的な作品を作ったそうです。
Unterweissbach(Schwarzburger) "Ash Wednesday"
D. Charol作、1924年(First Made Unknown)、H36cm白磁の女性ピエロ。作者のCharolはローゼンタールでも活躍していました。 薔薇を手にして物思いにふける姿が素敵です。
Karl Ens "Dancer"
作者不明、1920年頃?(First Made Unknown)、H20cmドイツ・フォルクシュテッドのENS窯も、優れた動物(特に鳥)のフィギュアや、ローゼンタールには及ばないもののアールデコ・フィギュアもたくさん作っていました。
この作品は、踊り子の衣装の動きが美しく表現されています。顔がちょっとお多福なのが残念!
Karl Ens "Dancing Girl"
A. Berger作、1930年代(First Made Unknown)、H25cmベレー帽と最先端ファッションで決めて踊るおしゃれなモダンガールです。上半身は気合いが入っているのですが、下半身の造形と絵付けが力尽きたのか少し雑なのが残念(このあたりで窯の力量が決まりますね)。でも好きです。