アールデコは、ともすれば安っぽくなってしまいがちで難しく、人によって好き嫌いがはっきり分かれているように思いますが、今になってもなお斬新さを失わない素敵なものも多いです。
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Rosenthal Vase
1921年頃、高さ11.5cmローゼンタールで自らの名前を窯印とともにプリントできたアーティスト、Kurt Wendlerデザインのベースです。
Wendlerは絵画、写真、テキスタイルデザイン、映画のポスター制作など当時幅広いジャンルで活躍したアーティストです。1920年代にローゼンタールに在籍し、"Indra(インドラ)"というシリーズ名でカップやベース、ジャー、小物入れなどを制作しますが、強烈な色遣いとどこか日本的な構図が特徴です。
彼のスケッチには日本の鯉絵をかなり達者に模写したものもあり、このインドラ・シリーズもジャポニズムの影響を受けていると考えてよいと思います。
日本のモティーフが、デコらしく大胆にアレンジされている小粋なベースです。
2 Sevres Vases
左:1924年、高さ18cm
底のサインは「FB d'ap. Mm. Aubert」とあります。器形デザインおよび図案はMme BethmontおよびFelix Aubert(1920-24在籍)(どちらが器形や図案を担当したかは不明)、デコレーターはAugust Berlin(1920-51在籍)だと思われます。
釉下彩で連続文様が描かれていますが、スモーキーな緑と茶の柔らかな色合いが気に入っています。また、きりっとした造形はセーヴルならではですね。右:1930年、高さ10.2cm
底の作者サインは分かりづらいのですが「I. Rolland」とあります。
マーク部分は、上から「FAIENCE」、この時代のセーヴルマーク、「SEVRES MANUFACTURE NATIONALE FRANCE」そして1930年製を表す「C」。ということで、陶器製です。
丸い形に波?ゼンマイ?の連続文様があしらわれ、動きのある印象です。どのような技法で作られているのか分かりませんが、紫の地色が良いです。花との相性もとても良いベースです。
St. Petersburg "Red Star" Plate
Michael Michailowitsch Adamowitsch作、1920年、直径24cmロシアン・アヴァンギャルドと呼ばれるムーヴメントを良く表している作品です。
労働をテーマにしたモティーフを金彩で周囲に施し、中央に赤い星、花文字で「CP」(ソ連社会主義人民共和国をキリル文字で表したCCCPの略?)と描かれています。
社会主義とは相容れないはずの、セーヴルに迫る繊細・豪華な金彩が見事!
Richard Ginori Bowl
1924年、直径21cm、高さ11cm20世紀イタリアデザイン界の巨匠、Gio Pontiデザインのボウルです。
古典柄を見事にデコ的に解釈しているのに、なぜか仏画の飛天を思い起こさせます。 ポンティ独特の紫色が違和感なく落ち着きを与えていますし、規則正しく幾何学的に表現された波?もリズミカルです。
対して海の青と金彩で描かれたキメラや魚たちは、自由闊達で歌っているかのよう。
ポンティの卓越したデザイン力、職人さんの表現力に脱帽!です。
Richard Ginori "Leptis" Plate, Demi C/S
1925年、Plate:直径25cm、C/S:カップ直径5cm、高さ6cm、ソーサー直径11.5cm古代ローマの都市レプティス(Leptis Magna、現リビア)の名が付けられたシリーズです。
1923年にジノリのアートディレクターとなったジオ・ポンティですが、就任後この他にも複数違うタイトルで古代をデコ風にデザインしたシリーズを創作し、国内の美術展覧会に出品しました。また1925年のパリ万博ではグランプリを獲得しています。
この"Leptis"は男性と女性の周りにそれぞれ紳士/婦人小物をあしらい、とてもファッショナブルなデザインです。
Rosenthal "Ivory" Silver Overlay Demitasse C/S
1921年幾何学模様がとてもシャープな銀巻きデミタス。ローゼンタールの銀巻きは他の窯とは一味も二味も違って独創的です。
アメリカでも銀巻きコレクターは多く、ローゼンタールは特に人気です。
Rosenthal "Ivory" Silver Overlay Demitasse C/S
1930年代下のカップと同じシリーズ「Madelein」の銀巻きデミタスカップ。地色の白を生かして余計な彩色を施さず、段違いにあしらわれた銀のアラベスク文様が映えて、すっきりとした印象に仕上がっています。
Rosenthal "Donatello" Silver Overlay Demitasse C/S
1940年Jugebstilコーナーのカップと同じもの。中国の切り絵のように銀がカットされ、紫色の地がのぞく、オリエンタルなようなモダンなような、不思議な感じを受けます。
Rosenthal "Madeleine" Demitasse C/S
1928年ローゼンタールのアールデコ食器のラインでは一番ポピュラーなフォーム「Madelein」の豪華なデミタスカップです。オレンジ、黒、金という難しい組み合わせを、上質のデコ作品にうまくまとめています。このセンスに脱帽ですね。
Richard Ginori Demitasse C/S
1930年代エジプトをテーマに、蓮をかたどったハンドルがとてもユニークなジノリのカップ。色彩もいかにもイタリアらしく陽気です。
デコ期はエジプトやマヤ文明のデザインが好んで取り入れられましたが、これはその中でも特にユニークで楽しい!
KPM Vase
1924年、H22cmAdolf Fladデザイン。おそらく日本か中国の壷の伝統的な絵柄をデコ風にアレンジしたと思われます。王立系の窯は大衆文化であるアールデコをあまり取り入れていないのですが、KPMは王立系の窯では一番デコ風作品を作っていたのではないでしょうか。フィギュアにも素敵なデコ風のものがあります。(欲しい〜!)
ローゼンタールのデコを消化しきった大胆さはありませんが、生真面目な筆使いが、いかにも王立窯が流行にもチャレンジしてみました!という感じで微笑ましいです。
Augarten "Ena" Tea & Coffee Set
1930年代アールデコ磁器に限らず、造形の美は白磁で愉しむのが一番ですね。
このEna Rottenberg 作のティーセット"Ena"は、コーヒーポットにターバンを巻いたインド人、ティーポットに辯髪の中国人、砂糖壺に人種不明の女性?とそれぞれの蓋にエキゾチックな人物の頭部がデザインされ、不思議(不気味?)な雰囲気のセットです。